第26回(2025年9月25日放送)
テーマ:「日本に原子力潜水艦は必要か?」(前編)
今回のテーマは「日本に原子力潜水艦は必要か?」です。
防衛省の有識者会議が9月19日にまとめた報告書で、長射程ミサイルを発射できる垂直発射装置(VLS)を搭載した次世代潜水艦の導入が提言され、その動力源として原子力潜水艦の可能性が示されました。
番組では、この報告書を手がかりに、原子力潜水艦の歴史的背景、技術的特徴、戦略的意義について多角的に論じました。
番組冒頭では、VLSの仕組みが解説されました。
イージス艦に搭載されているVLSは、甲板上の多数のハッチから垂直にミサイルを発射する装置で、海上戦力の基盤となっています。
潜水艦にVLSを搭載することは技術的に容易ではなく、潜水艦が円筒形であるがゆえに安定性や構造的な課題が伴います。
その原型は、戦中に日本海軍が建造した巨大潜水艦にさかのぼり、これを米軍が接収・研究した結果、アメリカの原子力潜水艦設計に影響を与えたとされています。
次に、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の戦略的な役割について説明がありました。
ICBMと異なり、SLBMは海中から発射されるため位置が特定されにくく、迎撃がほぼ不可能に近いとされています。
このため、SLBM搭載原潜は“移動する発射基地”として機能し、抑止力の中核を担っています。
実際に米国・ロシア・中国・英国・フランス・インドが原潜を保有し、戦略核戦力の柱としています。
苫米地さんは、既に核抑止の主役はICBMからSLBMに移行していることを強調しました。
さらに、原子力推進の利点にも触れられました。
ディーゼル潜水艦が定期的に浮上して充電や換気を行う必要があるのに対し、原子力潜水艦は酸素を必要とせず長期間の潜航が可能で、数か月から半年、条件次第では1年以上水中に留まることもできるといいます。
電力が無尽蔵に供給されるため、海水から酸素や水を生成でき、補給上の制約が大幅に軽減されることが大きな強みです。
その一方で、原子炉の安全性、燃料交換や廃棄物処理など、長期的な課題も存在します。
番組ではまた、原子力潜水艦の導入が必ずしも“核保有”を意味するわけではないと指摘しました。
実際には核弾頭ではなく、通常弾頭の巡航ミサイルを搭載して抑止力を確保する運用も可能です。
核共有の議論とは切り分けて、推進方式としての原子力の意義を理解することが重要だと強調されました。
結びに苫米地さんは、原潜導入は日本にとって単なる軍事技術の話ではなく、外交、安全保障、国民的合意を含めた総合的な判断が求められる課題だとまとめました。
抑止力の強化は必要であっても、核搭載の有無、運用上のリスク、国際関係への影響を含め、冷静な議論が不可欠であるというメッセージが発せられました。
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9/25(木)深夜0am - 0:30am
DJ:苫米地英人
ハッシュタグ:#cosmicradio
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