第25回(2024年9月18日放送)
テーマ:「なぜ人は騙されるのか?」
今回のテーマは「なぜ人は騙されるのか?」です。
番組冒頭では、2025年1月に北海道函館市で発生した、高齢女性が約2億円分の金の延べ棒を詐欺グループに騙し取られた事件を例に挙げ、特殊詐欺の手口と心理的な仕組みを掘り下げています。
事件の概要として、警察官や県警職員、さらには検事を名乗る人物から次々と電話があり、被害者が「捜査に協力するため」と信じ込まされて金を購入し、自宅に置いたところを回収されるというものです。
典型的な『劇場型詐欺』であり、被害者は一度その臨場感に入り込むと論理的思考が麻痺し、現実離れした指示にも従ってしまうという特徴が語られました。
苫米地さんは、こうした詐欺が成立する背景には「臨場感」と「洗脳」のメカニズムがあると解説します。
電話は一対一の密室的なコミュニケーションであり、特に電話と共に成長した世代にとっては強い臨場感を伴います。
警察や検察といった肩書きは権威の象徴であり、高齢者ほどその権威に信頼を置きやすい傾向があります。
こうして複数の役者が登場することで、被害者の世界観は巧妙に作り替えられてしまうのです。
さらに苫米地さんは、単なる『催眠』ではなく、より持続的で深い影響を与える『洗脳』のプロセスに近いと説明しました。
電話を通じて繰り返し権威的な情報が与えられることで、被害者は徐々に判断力を失い、数カ月にわたって巨額の資産を差し出してしまうのです。
この仕組みを理解することは、単に高齢者だけでなく、すべての世代にとって重要だと強調されました。
現代の若年層では、電話よりもソーシャルメディアやスマートフォンを介した環境が臨場感の中心になります。
SNS上の人間関係やアルゴリズムが作り出す空間は、現実と同等かそれ以上の影響を及ぼす場合があり、そこでも詐欺や情報操作が成立し得ます。
つまり「自分は大丈夫」と思っている人ほど、別の形で同様のリスクにさらされる可能性があるのです。
また、国家レベルでのプロパガンダや教育も、同じように人々の認知を操作する仕組みと指摘しました。
『洗脳』という言葉は強い響きを持つため、苫米地さんはかつて『認知戦』という概念を提唱しましたが、いずれにしても人間は誰しも環境や情報に影響される存在であることを認める必要があると述べました。
では、個人はどのように自衛すべきか。
苫米地さんは二つのポイントを挙げます。
一つは「キャッシュリッチにならないこと」、つまり巨額の現金や換金性の高い資産を持たないことです。
資産を持つなら教育や経験といった形で心を豊かにする『心のリッチ』を目指すべきだとしました。
もう一つは「個人情報を不用意に出さないこと」です。
表札を出さない、住所を分散させるなど、ターゲットになりにくい環境を整えることが重要だと説いています。
最終的に苫米地さんは、詐欺の本質は『人間関係とメディア環境が合致したときに生まれる臨場感』にあるとまとめました。
その臨場感に取り込まれないためには、自らの認知の仕組みを理解し、常に俯瞰的に状況を見つめ直す力が求められるのです。
年齢や立場に関わらず、誰もが騙される可能性を持っているという警鐘が、この回を通じて強く発信されました。
今回の放送は、特殊詐欺の事例を切り口にしながらも、個人の心理、社会構造、国家レベルの情報戦にまで議論を広げ、現代に生きる私たちが持つべき危機意識を鮮明に示す内容となっていました。
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9/18(木)深夜0am - 0:30am
DJ:苫米地英人
ハッシュタグ:#cosmicradio
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