
第30回(2025年10月23日放送)
今回のテーマは「ライカ100周年」。
苫米地さんは、ライカというドイツの老舗カメラメーカーについて、自らの愛用経験や歴史の背景を交えながら、カメラ文化の面白さや時代の移り変わりを語りました。
ライカ(旧ライツ社)は東西分断よりも前から続く歴史ある会社で、クロームやブラック、軍用オリーブ色の“サファリ”、赤いバッジを外した“Pモデル”、そしてチタンなど、さまざまなデザインを展開してきました。
苫米地さんはグリーンが好きでサファリモデルを特に愛用しており、ロゴを隠したり軍用テープでカスタマイズするなど、自分流のこだわりも紹介していました。
ライカはプロの現場ではコスト面で不利な部分もありますが、“道具としての完成度”や“写真を撮る感触の良さ”を大切にする人々にとっては、今も特別な存在であると話していました。
ライカの始まりは、もともと顕微鏡メーカーのライツ社にまで遡ります。
映画用のフィルムを一コマずつ写真撮影に使うという発想から、バルナックという技師が試作した“ウル・ライカ”が誕生し、これが世界の35ミリフィルム規格(現在のフルフレーム)の原点になりました。
今も“35ミリ換算”という言葉が残っているのはその名残で、人の視野に近い28〜50ミリ前後が“標準レンズ”と呼ばれるようになったそうです。
また、ライカが生み出したレンジファインダーという仕組みは、右目で被写体を、左目で外の世界を同時に見られるため、報道カメラマンに重宝されました。
一方で、鏡とプリズムを使って“見たまま”を写す一眼レフの登場によって主流が変わり、現在はミラーレスの時代になっていますが、レンジファインダーの独特な感覚は今でもライカの魅力の核になっていると語りました。
話題は日本のカメラ史にも広がりました。
ニコン(旧・日本光学工業)は海軍系、トプコン(東京光学)は陸軍系の技術をルーツに持ち、三菱グループの岩崎小弥太が支援した品川硝子が日本光学の前身になったことなど、産業の流れも紹介されました。
戦前や戦後すぐの日本は、ライカの技術を学びながら模倣も行い、カメラ発展の礎を築いた時代でもありました。
キャノンはボディの設計技術に優れており、当時日本光学からレンズの技術提供を受けて一眼レフで大きく成功。
一眼レフの“見たものがそのまま写る”という強みが、レンジファインダーとの差を決定づけたと言います。
その一方で、ツァイスやコンタックスなどのドイツ勢は一時的に劣勢となり、ライカも経営的に苦しい時期を経験しましたが、やがて“光学の本質”を追求する姿勢で再び支持を集めていったと苫米地さんは振り返ります。
レンズ設計の進化にも触れ、昔のダブルガウス構成では反射を抑えるためにレンズ同士を密着させていたのが、コーティング技術の進歩によって空気を挟む“空気レンズ”が可能になり、設計の自由度が広がったことを説明しました。
戦時中は女性たちが手計算で光線シミュレーションを行っていた時代もあったそうで、今ではそれがコンピューターによって瞬時に解析できるようになり、その技術は中国など世界各国にも広がっていると指摘しました。
日本も一時は技術者の流出などで勢いを失いましたが、最近では30〜40代の若いエンジニアたちが活躍し、ソニー、キャノン、ニコンなどから新しい名レンズが次々登場していることを“嬉しいニュース”として挙げました。
一方で、雑誌や量販店による過剰な宣伝にも注意が必要だとし、本当に価値あるものを自分の目で見極めることの大切さを強調しました。
苫米地さん自身は、ライカMやMPのサファリ、Pモデル、チタンモデルなどを複数所有しており、アポ・ズミクロンM 50mm ASPH.のブラックペイント仕様といったコレクターズモデルも愛用しています。
プロの撮影では国産ミラーレスの効率性を重視しながらも、“撮る行為そのものの楽しさ”や“機械としての完成度”を味わう上で、ライカの存在は別格だと語っていました。
また、現在開催中の「ライカ100周年記念展」についても触れ、「買い物ではなく、歴史を体感する場として訪れてみてほしい」と呼びかけました。
ライカの100年の歩みは、顕微鏡から映画、そして写真技術へと発展し、今やスマートフォンのカメラにも影響を与えていると締めくくりました。
全体を通して、苫米地さんは「技術の歴史を知ることは、モノの価値を知ることにつながる」と語り、カメラの仕組みや歴史の中に、人間の創造力や美意識が息づいていることをやわらかく伝えていました。
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10/23(木)深夜0am - 0:30am
DJ:苫米地英人
ハッシュタグ:#cosmicradio
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