第27回(2024年10月2日放送)
今回の放送では、前回に続き「日本に原子力潜水艦は必要か?」をテーマに、苫米地さんが原子力潜水艦の未来と技術的・戦略的な意義について語った。
冒頭では、ウクライナへのロシアの侵攻により、従来の核抑止の枠組み(NPT体制)が大きく揺らぎ、NATO諸国や周辺国でも核共有や戦術核の保有を検討する時代に変化してきた現状を振り返りつつも、潜水艦の本質的な役割は変わっていないと強調した。
特に焦点を当てたのは、原子力潜水艦のエンジンと騒音の問題である。
原子炉そのものは臨界状態を保つだけであればほとんど音を発さないが、得られた熱で水蒸気を作りタービンを回す段階で騒音が発生する。
ディーゼルエンジンはピストンの動作そのものが騒音源であるのに対し、原子炉は本質的には静かであり、推進時の音はタービンと最終的にはスクリューの回転によるものであると説明した。
日本はこの騒音の最小化技術で世界的に高い水準を持っていると指摘した。
さらに、現代の原子力潜水艦は高度な静粛性を追求しつつも、長期間潜航し続ける能力を持ち、その戦略的価値が非常に高いことを解説した。
原子力を動力とすることで酸素を必要とせず、海水から酸素や水を作り出せるため、半年以上も浮上せずに活動できる可能性がある。
こうした長期潜航能力は、敵に発見されるリスクを大幅に減らし、抑止力を高める最大の要素となる。
苫米地さんは、こうした技術的背景を踏まえたうえで、防衛省の有識者会議が提言した次世代の原子力潜水艦導入構想は、核弾頭の搭載を前提としないとしても、抑止力の観点から合理的だと述べた。
重要なのは、原子力潜水艦が核を積むかどうかではなく、どこからでも発射可能な長射程巡航ミサイルを搭載できる潜水艦を持つことであり、その存在自体が相手国に対して大きな抑止力となると強調した。
一方で、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)が核抑止の主役であった時代はすでに過去のものになりつつあり、現代はより精密な誘導技術を備えた巡航ミサイルが通常弾頭であっても十分に抑止効果を持つ時代に移行していると指摘した。
核は「最後の手段」として残り続けてはいるが、政治的にも運用上も実際には使えない兵器であり、その点で現代の抑止力は従来のSLBM依存から脱しつつあると述べた。
番組終盤では、原子力潜水艦の本質的な強みは長期間秘匿し続けられる存在であることにあり、たとえ通常弾頭のミサイルを搭載していても、その隠密性こそが相手国に対して強い抑止メッセージを送るとまとめた。
防衛力強化を議論する際には、原子力潜水艦の技術的特徴や抑止の仕組みを正しく理解し、核問題と混同せずに議論を進めることが重要だと訴えた。
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10/2(木)深夜0am - 0:30am
DJ:苫米地英人
ハッシュタグ:#cosmicradio
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